【サービスとホスピタリティの違い②】マニュアルが組織を弱くする!?(3)

こんにちは、一般社団法人日本歯科ホスピタリティ協会・代表の河合良一です。

前回までの記事では、マニュアルのメリットと弊害、そしてマニュアルを活用しながらホスピタリティを大切にできる組織づくりについて考えてみました。

■前回までのマニュアルについての記事

今回はそれらを踏まえて、「サービスとホスピタリティの連動」がテーマです。サービス化とホスピタリティをうまく連動させ、マニュアルにも落とし込み、強い組織を創る方法です。

ホスピタリティを標準のサービスへ

私は、サービスとホスピタリティは対立する存在ではなく、うまく共存させて連動させることが重要だと伝えています。

例として、ホテルに当てはめて考えてみます。目の前の1人のお客様の個別の欲求やニーズを捉えて、喜んでいただけるようにいろいろな提案や配慮をすることが「ホスピタリティ」です。

このホスピタリティがお客様の心をつかみ、他のホテルでは未提案の新しい概念であればあるほど、他のお客様にもスタンダードなものとして提供すべきです。そうすることでより多くの人に喜んでいただけるし、評判が高まることで他の人からも宿泊先として選んでもらえることになるからです。

歯科医院でも同様です。個人の判断でホスピタリティが行われて、そのことを院内で共有してマニュアル化することで「サービス化」する。そうなると、患者さんが得られる価値の水準は明らかに高くなります。

ホスピタリティ事例の院内共有が鍵

サービスとホスピタリティの連動を実現するには、前回の記事でも少し触れたように失敗事例だけではなく「成功事例」も院内で共有することが必要なプロセスとなります。

ホテル業界で著名な窪山哲雄氏という方がいます。ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパを再建し注目を浴びた経営者で、現場の智慧を活かして山本先生とホスピタリティの研究にて協働もされています。

以前に、窪山氏が山本先生との対談でこのようにおっしゃっていました。

”「サービス化するものを抽出するプロセスも論理的に構築する必要があります。旅館の女将さんのケースで考えると、女将さんが顧客をハッピーにさせるために新たなホスピタリティを提供した結果、思った以上にうまくいったことをみんなに知的開放する。

より具体的に、情緒的に、顧客がどんな状態のときに、何をしたら喜ばれたかを共有するのです。」(引用:季刊iichiko No.146「おもてなしとホスピタリティの文化学)”

 

ホスピタリティなので論理だけでなく、情緒面を共有する必要性を説いているところが面白いですよね。

情緒面(感情)を共有する必要性

私の考えでは、ここでいう情緒的なシェアは「提供側」と「お客さん」の両方の感情をシェアすることが大切です。

なぜなら、ホスピタリティをサービス化していくと時間が経つに連れて「心」「感情」が失われていくからです。

最初にホスピタリティをした人は「目の前の人お客さんに喜んでほしい」と思って行ったはずです。しかし、それがマニュアル化されたサービスになってしまうと、心がこもらない「決まっているからやること」となってしまうのです。

画一的なサービスのレベルを高めることは、「安心感」を感じてもらう重要なおもてなしの要素であると考えています。しかし、そこに「心」を大切にし続けることで患者さんへ伝わるものが変わりますし、スタッフのやりがいや成長にもつながります。

そのために、共有するときもマニュアル化するときにも「提供側はどんな気持ち、想いでそれをしたのか」ということは必ず表現すべきです。

実際に患者さんのために何らかの行為に及んだということと同等かそれ以上に大切なポイントであるという認識も医院全体で持ってください。

院内で共有をしたほうがよい項目

前回の記事のおさらいですが、以下に転載しておきます。

<ホスピタリティ事例の振り返り手順>

  • それが行われた時、具体的にどんな状況だったのか
  • 具体的に何をしたのか、どう喜んでもらえたのか
  • 何を、どう考え、どう判断したのか(思考プロセスを聞く)
  • チャレンジしたときの気持ちと今の気持ちは?
  • 医院としてのフィードバック(何が素晴らしかったか伝える)

 

これらを共有して、歯科医院として標準化したほうが良さそうなことは、どのようにすれば大きな負担がなく、かつ再現性が生まれるかという議論へ進むと良いでしょう。

そして、決まったらマニュアルに組み込んで、実際のオペレーションの中で定着をさせていくプロセスへと移ります。

ホスピタリティを投資として捉える

再び、窪山哲雄氏の言葉を引用します。

”例えば1泊2万円の部屋に泊まっている客が急病になり、その対応のために5万円くらい費用がかかったとします。食事をキャンセルしたり、お粥を部屋に届けたり、薬を買いに行ったりなど、女将さんの判断で様々な手配をした費用です。

緊急対応は客の許可を得ずに行うことが多いのです。これを客室料金から差し引くと3万円のオーバーコストです。しかし、実際には、これらはコストでは終わらない。なぜなら、その客は必ず、その旅館に感謝し、再び来館してくれる。また、そこでの体験が他の人とシェアされることで、評判も高まる。

そうなると「ホスピタリティ」に要したコストは、コストではなく投資と言えるのです。”

 

目先の損得や効率だけを考えるとホスピタリティは損ばかりのように感じることがあります。診療を効率よく回すことの妨げになったり、保険診療なのに時間がかかりすぎてしまったりということもあるでしょう。

しかし、ホスピタリティをサービス化する際には、長期的な視点を持ちながら「これは投資に値するか」と考えて判断をする必要があります。

要は、歯科医院の院長先生や幹部スタッフにとって、長期的・大局的な視点を持って「事業採算性があるのか」という「事業性フィルター」も重要なものであると理解することが必要なのです。

この記事のおすすめの活用法

医院に幹部スタッフがいる場合には、この記事を一緒に見ながら「どうしたらうちの医院でもホスピタリティとサービスを連動できるか」ということを考えてみてください。

もしかしたら、前回までの記事を読むことでも医院の課題が見つかるかもしれません。

おすすめは、まず「ホスピタリティ事例」をミーティングなどで発表してもらうやり方です。「ホスピタリティ事例」というと大げさに感じて発言しにくくなってしまうかもしれませんが、どんなに小さなことでもOKです。事前に告知をしておくと話しやすいでしょう。

  • 抜歯を怖がっている人に、こんな声をかけたら安心してもらった
  • 受付の時に、前回の話を踏まえて言葉をかけたら表情が明るくなった
  • お子さんに●●をしてあげたら泣き止んだ
  • キャンセルした人に気遣いの声掛けをしたら感謝してもらえた

などなど、現場の人が普段あたりまえにやっていることでもOKです。自分の当たり前は他の人の気づきになることが多々あります。

最初は、1人1つくらい考えてきてもらって1ヶ月に1回くらい発表するのもよいでしょう。始めたばかりの頃は遠慮がちになると思いますが、定着してくると非常に有益な場となります。

ホスピタリティ事例を属人的なものにするのではなく医院の共通財産として育んでいくことを始めると良いですね。ぜひ、やってみてください。

■「サービスとホスピタリティの違い」に関する記事

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