【サービスとホスピタリティの違い④】ホスピタリティのポイントは「心」の動き

ホスピタリティは「心の技術」です。日頃からそうお伝えしていますが、その意味への理解が少し深まる記事の内容です。

こんにちは!日本歯科ホスピタリティ協会・代表の河合良一です。

今回も引き続き「サービスとホスピタリティの違い」についてお伝えしていきます。

<「サービスとホスピタリティの違い」シリーズ>

※この記事は以下の表の⑤の項目です。

サービス=「すべきこと」「せねばならないこと」でする

これまでもお伝えしてきたように、サービスは客のためでなくマニュアルに決まったことを遂行することが優先される、ということが起こります。

すると、現場のスタッフが客に対してすることは、そのことをしたいからするというより「すべきこと」「せねばならないこと」をすることが仕事になります。

このことには、どんな弊害があるでしょうか。。

■「あいさつ」のサービス化

街のコンビニや飲食店に行くと、ただ言っているだけと感じる「あいさつ」によく出くわします。「いらっしゃいませ、こんにちは」「ありがとうございました、またお越しください」など。

ショッピングモールのアパレル店では、店員さんが人に対してではなく空中に「いらっしゃいませ~」と言っている光景がよくありますよね。もはや当たり前になっている感もありますが、よくよく考えると奇異な光景です。

これは、あいさつという行為が「すべきもの」「せねばならないこと」と決まっていることから起こります。しかも、働き手もこのことに無自覚な状態で行われていることがほとんどです。

お店としては「活気を出す」という目的があるのでしょうが、現場のスタッフの中で「あいさつの意味」が失われているので、人が近くにいても、入店しても、空中に向けて挨拶をします。

当然ですが客としては「とうぞ、当店にいらしてみてください」「ようこそいらっしゃいまました」というものにはまったく感じられません。あいさつが「すべきこと」としてサービス化しているからです。

「すべきこと」で仕事をすると感情がなくなっていく

完全にサービス化した挨拶には、店員の客に対してのポジティブな感情がありません。むしろ「疲れた」「面倒くさい」というネガティブな感情が伝わってくることさえあります。

そんな挨拶に慣れてしまっている客側も特に期待しないのでクレームなどはしないものの、店側に対してポジティブな感情は特に湧きません。

飲食店でも歯科医院でも、なんだか暗いなぁと思う雰囲気の場所は例外なくあいさつから感情が感じられません。あなたの医院ではいかがでしょうか?

感情がなくなっている仕事は面白くない

挨拶はごくごく一例にすぎません。日頃やっている仕事の多くがサービス化して、行っている人も意味を見失い、感情を失っていることで溢れてはいませんか。

日々の業務が「すべきこと、せねばならないこと」で溢れ、そのことの意味や感情が失われた仕事はもはや作業でしかありません。

そんな仕事が当たり前になっている状態は、楽しくやりがいのあるものになるでしょうか。

ホスピタリティ=「したいこと」をする

サービスに対してホスピタリティは、「したい」という感情が鍵になっています。

ルールには特に決まっていないけど、いまここで、目の前の人にこれをしてさしあげたい。そういう「心」の動きから生まれた行為こそがホスピタリティたりうるのです。

つまり、たとえ患者さんであっても、あなたがしたくないならばしなければいいのです。本当はしたくないのに「ホスピタリティをしなきゃ」という気持ちですると自己犠牲となり、いずれ疲れ果てて嫌な気持ちになります。

「自己犠牲の上に成り立つ奉仕」はサービスであって、ホスピタリティではありません。

自分のしたいことができる歯科医院を目指す

私の知っている範囲では、来院したすべての人にホスピタリティをしている歯科医院もあります。そのため多くの人は診ることができないので、1日に1人しか診ない日もあります。もちろん完全自由診療です。

多くの人が憧れるかもしれませんが、それはそれでかなり難しい症例に向き合い続けるプレッシャーを感じ続けたり、売り上げが不安定になりがちであるとか苦しい部分もあります。しかし、院長先生がどうしても「したいこと」なのでやっているのです。

逆に、総合的に考えてそれをしたくない人が、無理をして目指すと非常に辛い思いをします。

完全にホスピタリティの医院がベストなわけでなく、あなたがサービスとホスピタリティの混在型の医院を目指したいなら、それがあなたにとっての正解です。むしろ、このハイブリッド型の方がマッチする医院が圧倒的に多いでしょう。

以前の記事に書いたように、医院経営においても「自分のしたいこと」を大切にする必要があるのは、このような理由もあります。

あなたが創りたいと思える医院を本気で目指すことが、ホスピタリティ歯科医院となる第一歩とも言えるでしょう。

スタッフマネジメントも自己犠牲はツライ

対患者さんのことだけでなくスタッフマネジメントについても同様です。先生の行為がそのスタッフに対して「したい」「してあげたい」という想いがないと、スタッフのことを真剣に考えて向き合うほど辛くなります。

「なんで、俺がここまで考えなくてはいけないんだ」
「いくらこちらが考えても、反応がないじゃないか」
「もう、スタッフのことなんか考えたくない」

ホスピタリティマネジメントを目指してスタッフのことを真剣に考えだすと、このようにしんどくなる方がいます。これは意外に多くの方が通る道でもあります。

しかし、それを乗り越える方も多くいます。

体験したことがないとイメージしづらいと思いますが、たとえ最初はしんどくても、様々な角度や視点で医院のこと、スタッフ個人のことを考えていくと「心」が動くことがあります。

「したい」「してあげたい」という自分では制御できない人に対しての「心」の動きです。

これを原動力にしないでスタッフにも個別対応をしようとすると、自己犠牲の上に成り立つ辛いマネジメントになるのです。

したいことが分からないという人が多い

実は、この記事の内容が私が過去に一番苦労したポイントです。ホスピタリティと出会う前から、「本当に自分が何をしたいことはなにか」ということが分からず模索していた時期がありました。しかし、一生懸命考えても一向に見つかりませんでした。

この「自分のやりたいことを見つける」というテーマは伝えたいことが多すぎるため、別の記事でいずれしっかりと書きます。

ひとまず、「したいことが分かりません」という方には「感情」に敏感になることをお勧めしています。

私の場合がそうだったのですが、つい「正しいこと」「あるべき姿」を頭で考えてしまい、「心がどう感じるか」という視点を意外と人は持っていません。特に男性院長や、(競争や勝ち負けという男性社会の論理で)ストイックに頑張ってきた女性に多いように思います。。

したいことが分からない場合には、あなた自身が心の動きに鈍感になっている可能性があります。ぜひ、日頃から喜怒哀楽を感じることからはじめてみてください。心が鈍感になっている状態では、いくら頭で考えてもわかりません。。

皆がしたいことをしたら混乱が起きる?

ホスピタリティ医院を目指すと、必然的にスタッフも自分がしたいことをしやすい組織作りに向かいます。

しかし、そこで「それぞれが勝手にしたいことをしていたら、混乱が起きますよね?」という質問をよく受けます。それは、多くの人が「したいこと=勝手な自由」と思い込んでいるからです。

ホスピタリティを行うには、その人の倫理感が重要になっていきます。これを養うには医院として「大切にしたいもの」を言語化して、日頃から共有することが最も重要だと考えます。

逸脱してほしくないこと、守ってほしいこと、積極的に取り組んでほしいこと、医院として提供したいことなどなど、医院の価値観がどれだけ共有されているかで、「秩序ある自由」なのか「無秩序な自由」なのかが変わります。

人が元気になる「秩序ある自由な職場」を増やしていきたい、創るサポートをしていきたいというのが、私のしたいことの1つでもあります。

したいことへのチャレンジを頭ごなしに否定しない

ある医院でこんなことがありました。

とある中堅スタッフがプライベートで仲良くなった整骨院のオーナーと「ぜひ、地域の人に健康を啓蒙するイベントを開催しよう!」という話で盛り上がって、大体の開催時期や内容まで相談していたことがありました。

それを院長に話すと「なんで、勝手にそこまで話を進めているの?そこまで勝手に盛り上がる前に、報告連絡相談すべきじゃない?」と怒ったことがありました。

勢いとノリで行動するタイプの彼女は発想力と行動力という強烈な長所を持っていましたが、石橋を叩きたいその院長の性格とは逆なので、不安になることが多かったのでしょう。

スタッフの相談の仕方もやや雑な部分があり、院長先生の不安を増長させてしまったのだと思います。もう少し丁寧な話の持ち掛け方があったり、提案方法だったら結果は変わっていたかもしれません。

残念ながら、他にも彼女の長所が院長にとってはマイナスのものとなってしまうことが続き、その医院での仕事が窮屈なものになってしまい辞めてしまいました。

「この職場は自分がしたいことができない場所なんだ」と諦めると人は希望を失います。

人は、希望を失うと退職へつながる可能性が高くなるのです。

■やりたいことを言える環境と提案できる仕組み

突飛な意見だったり、チャレンジしたことを頭ごなしに否定しない。医院として大切にしたいものを共有しながら、日頃からチャレンジを推奨する。そんな環境を作ろうとがんばっても最初のうちは提案は出てきません。

ですので、少しずつやりたいことを考えさせたり、提案したり、意見を出しやすい仕組みを作ったりするのがお勧めです。

まずは院長や幹部が面談で何をしたいか考えることがからはじめてもよいでしょう。これも最初はほぼ意見は出てきません。

出てこない場合には、そのスタッフが成長できそうで、かつ楽しいと思いそうなことを提案してみるのも良いきっかけになります。

また、思いついたときに提案できる仕組みがあることが望ましいです。それが院長や幹部の面談なのか、ミーティングなのか、シートに記入して提出してもらうのかは、医院ごとにやりやすい仕組みを用意すると良いと思います。

大切なのは「自分のやりたいことができる環境なんだ」「やりたいことの提案をする場がある」という認識です。

■やりたいことだけやっていると診療が回らないのでは?

この記事でお伝えしている「したいことを大切に」というのは、やりたくないことをやらず、したいことだけするということではありません。

テレビ番組でも特集されて、独特な働き方や経営の考え方が一部で注目されている「パプアニューギニア海産」という会社があります。その会社は自分の好きな業務しかしてはいけないという体制をとっています。これは、不得手なことをやると意欲も生産性が下がるからという理由です。

非常に面白い発想ですよね。考え方自体は歯科医院にも応用できそうではありますが、現実的にはすぐに行うことは診療を考えると難しいでしょう。

では、やりたくないことについてはどう考えるか?

私がお手伝いをしているクライアント先では、自分にとっての仕事の意味や、自分が仕事において心が喜ぶことを考えることを推奨しています。

■何のために働くのか、働きたいのか考える

自分は何のために働くのか。働きたいのか。
自分の心が喜ぶのは、仕事で何がなされたときか?

これらを自分で見いだせると、目の前のことも「したいこと」につながります。

特に「何のために働くのか」というのは大切です。これは「この価値観を持たなくてはいけない」と他の人から与えられるものではありません。

自分が本当に仕事においてしたいことはなにか。患者さんにどう貢献したいか。仲間に対してどう役立ちたいか。

そんなことが見えてくると、面倒でやりたくないことがあっても、よくよく考えると仕事で自分がやりたいこと、実現したいことには必要なことであることが多くあります。

やりたいことにつながることを自分で認識できれば、全てとは言いませんが自分のしたいこととして仕事をすることにつながっていることが実感としてわかるでしょう。

すぐには見つからない人もたくさんいると思いますが、まずは自分に問うことからはじめてみてください。

■まず、やってみてほしいこと

この記事のまとめのような項目ですが、ホスピタリティ医院を目指していく場合にはこんなことから始めてください。

・自分のやりたいこと、創りたい医院は何かを考えてみる
・心の動きが分からなくなっている人は、日頃から感情に敏感になってみる
・「何のために働いているのか」「働きたいのか」考えてみる
・日々の業務でも
・仕事で自分の心が喜ぶことを考えてみる
・してさしあげたい、と思ったことは小さなことからやってみる

 

まず簡単な行動からはじめるのであれば、「あいさつで少しでも安心してほしい」という想いをもって、「こんにちは!(ようこそ、いらっしゃいました)」と目の前の患者さんに向けて挨拶をするくらいのことからでも良いです。

きっと、挨拶した後は「心」が気持ち良い状態であるはず。これがホスピタリティへの入り口です!

 

<「サービスとホスピタリティの違い」シリーズ>

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