セカンドコンサルで何を話せばいいか分からない。説明はしているのに、患者さんの反応がいまひとつ。そんな悩みを抱えていませんか。
セカンドコンサルとは、初診コンサル後に行う検査結果・治療計画の説明の場であり、患者さん自身が口腔内の現状を理解し、治療に対する自己決定と同意を行うための時間です。ここでの伝え方一つで、患者さんの信頼感も、治療への前向きさも大きく変わります。
私がセカンドコンサルの冒頭で必ず伝える言葉があります。「今からお話しする内容は、提案であって決定ではありません。最終的に決めるのは○○さん自身です」。TC歴20年、3万人を超える患者さんと向き合ってきた中で、この一言の持つ力を何度も実感してきました。
この記事では、セカンドコンサルの準備から話し方、クロージングまでの流れを、私自身の現場経験をもとにお伝えします。
セカンドコンサルの定義──TCが「決める場」ではない
セカンドコンサルについて、まず私自身の定義をお伝えします。正しい資料をもとに歯科医師と歯科衛生士が正しい治療計画を立て、トリートメントコーディネーターがそれを理解し、患者さんに伝える。患者さんご自身の口腔内に興味を持っていただき、デンタルIQを高めてもらう時間。その上で、治療内容を理解していただき、自己決定と同意を得る時間──これがセカンドコンサルです。
ここで大切なのは「私たちは治療計画を立ててはいけない」ということ。TCの仕事は、ドクターが立てた治療計画を理解し、患者さんが納得できるように伝えることです。治療方針を勝手に決めることでも、患者さんを誘導して「はい」と言わせることでもありません。
この前提が曖昧なまま進めてしまうと、途中で患者さんが不安になったり、「勝手にされた」という多責やクレームにつながったりします。実際、他の医院さんから転院されてくる患者さんのお話を聞くと、「勝手に削られた」「よく分からないまま進められた」という声がとても多いのです。
それはほとんどの場合、悪意ではなくコミュニケーション不足から生まれています。だからこそ、セカンドコンサルの最初の一言が重要になります。
「提案であって決定ではない」──この一言がなぜ効くのか
私がセカンドコンサルを始める前に、必ず患者さんにお伝えしている言葉があります。
「今からお話しする内容は、当院の歯科医師チームと歯科衛生士が立てた治療計画です。今日は私からその計画のご説明をしますが、提案であって決定ではないので安心してくださいね。最終的に治療を進めることを決定するのは○○さん自身ですので、不安なことや分からないことがあれば、何でも聞かせてください」
これを伝えるだけで、患者さんの表情が明らかに変わります。肩の力が抜けて、「聞いてみよう」という姿勢になるのが分かるのです。
「決定ではなく提案である」と最初に伝えることで、患者さんは「自分で決めていい」という安心感を得る。この安心感が、逆説的に「ちゃんと聞こう」「自分で考えよう」という前向きな姿勢を引き出す。
なぜこの言葉が効くのか。それは、セカンドコンサルが「分離」ではなく「非分離」の関係から始まるからです。
「今から何が始まるか分からない」という状態は、患者さんにとって不安そのものです。不安は不快のスイッチを押します。そして不快な状態でコンサルを始めると、どれだけ正しい説明をしても、その先の内容は届かなくなります。
逆に、「決めるのはあなた自身ですよ」と伝えた瞬間、患者さんは受け身から主体へと切り替わります。決定権が自分にあると分かれば、説明を「聞かされている」のではなく「自分のために聞いている」という感覚になる。この転換が、セカンドコンサルの質を根本から変えるのです。
私はTC歴20年、3万人を超える患者さんに対応してきましたが、声を荒げられるような大きなクレームは一件もありません。その理由の一つは、セカンドコンサルの時点で患者さん自身が「自分で決めて治療を受けている」という実感を持っているからだと考えています。自分で選んだことに対しては、人は納得できるものです。
セカンドコンサル前の準備──話し方の前に環境を整える
セカンドコンサルの質は、患者さんの前に座る前にすでに決まっています。話し方よりも先に、環境と準備を整えること。これもホスピタリティの一つだと私は思っています。
まず、患者さんを「知る」準備。予診票や初診時の聞き取りシートには必ず目を通します。自分が初診コンサルを担当していなかったとしても、必ず読む。ポイントは、情報を「読む」のではなく「この人はどんな不安を抱えて来院されたのだろう」と想像すること。予診票は、患者さんの背景を知るための宝箱です。
お住まいが近ければご家族が通院されているかもしれない。強い痛みがあれば共感から入る必要がある。治療期間を気にしていれば、何か事情があるのかを確認する。喫煙習慣があれば衛生士さんへの情報共有につながる。勤務先の情報から通院しやすい時間帯を提案できることもあります。
次に、コンサルルームのチェックリストを確認します。整理整頓はできているか。説明用の模型や道具は壊れていないか。資料は揃っているか。筆記用具やメモ用紙は準備できているか。そして何より、患者さんの口腔内の状態と治療計画が自分の頭に入っているか。患者さんへ気持ちがしっかり向いているか。
こうした準備があってはじめて、「提案であって決定ではありません」という冒頭の言葉に、説得力が宿ります。
3分の壁と5ブロック──患者さんが「参加する」コンサルの設計
気がつくと5分も一方的に話し続けてしまっていた──そんな経験はないでしょうか。人が集中して話を聞ける時間は、およそ3分と言われています。だから私は、コンサル中は3分以内に一度、必ず患者さんにボールを渡すようにしています。
「ここまでで分からないことはありますか?」「初めて聞く言葉が多かったと思いますが、不安はありませんか?」。こうした問いかけが、一方通行の説明を「患者さんが参加するコンサル」に変えます。
具体的には、セカンドコンサルを3分1単位の5ブロックに分けて、15分で設計しています。
① 導入|自己紹介、セカンドコンサルの目的共有、「提案であって決定ではない」の伝達
② レントゲンの見方|左右・上下、歯の番号など、患者さんが自分の口の中を理解するための「地図づくり」
③ 歯の構造と虫歯の進行|エナメル質・象牙質・歯髄の役割を、分かりやすい言葉で
④ 患者さんの口腔内の現在地|レントゲン写真をもとに、具体的な虫歯の位置と治療内容を共有
⑤ クロージング|治療期間・回数のまとめ、質問の確認、安心の一言
各ブロックの終わりで患者さんの反応を確認しながら、このまま進んでいいのか、ここで立ち止まるべきかを判断します。これによって、患者さんは「置いていかれない安心感」を持って聞くことができます。
もう一つ大切にしていることがあります。コミュニケーションの位置関係です。セカンドコンサルでは、斜め前から話しかける「親愛の空間」を基本にしています。患者さんの斜め前に座り、モニターを一緒に見ながら話す。これが最も心が開きやすい位置関係です。
一方、費用の話や最終的な意思確認など、しっかり考えてもらいたい場面では正面に体を戻す「理性の空間」に切り替えます。ただし、いきなり正面から詰めてしまうと防御モードに入りますから、必ず親愛の空間→理性の空間→親愛の空間という流れを意識しています。
デンタルIQを上げる──知識が患者さんの「アンテナ」を立てる
セカンドコンサルで患者さんにレントゲンの見方と歯の構造をお伝えすると、その時点でデンタルIQはかなり上がっています。この変化には、心理学で「カラーバス効果」と呼ばれる脳の仕組みが関係しています。
カラーバス効果とは、一度意識したものに関連する情報がどんどん目に入ってくるようになる現象のこと。ラッキーカラーを決めた途端にその色ばかり目につくようになったり、子どもができたらベビー用品の広告に気づくようになったりするのと同じです。
患者さんも、歯の構造や虫歯の進行について知識を得ると、テレビやCM、日常の会話の中で歯に関する話題に自然と反応するようになります。すると、家に帰ってご家族にも話したくなる。「今日歯医者でこんな話を聞いてさ」「俺こんなことになってたんだよ」と自慢げに話してくれるのです。
実際に、私たちの医院ではセカンドコンサルをしっかり行うようになってから、患者さんがご家族を紹介してくださるケースが増えました。初診でお話を聞くと「主人がスマイルさんでこんな話を聞いてきて、お前も行った方がいいぞって言われたので来ました」と仰るのです。つまり、患者さんご自身がご家族に対してTCの役割を果たしてくださっている。
セカンドコンサルの目的は、ただ治療内容を説明して同意を得ることではありません。患者さんの歯の健康に対するアンテナを立てること。その先に、自然な形での信頼と紹介が生まれていきます。
クロージングは「終わり」ではなく「信頼を深める時間」
セカンドコンサルの最後──クロージングが弱いと、患者さんは「よく分からないまま終わってしまった」「なんとなく不安だけが残った」という状態で帰ることになります。クロージングは説明を終わらせる時間ではなく、患者さんが前向きに一歩を踏み出すための時間です。
私は、クロージングを4つのステップで行っています。
まず「要点のまとめ」。今日お伝えした内容のキーワードだけを簡潔に伝えます。長く繰り返す必要はありません。「○○さんの歯は○○の状態なので、まずは○○の治療が必要になります」と、次にやることだけを明確にします。
次に「理解と不安の最終確認」。「分からないところや不安な点はありませんでしたか?」「今日のお話を聞いて、気になることはありますか?」と、最後のボールを患者さんに渡します。
そして「次の行動の明確化」。「次回は○月○日に○○の治療を進めていきますね」と具体的に伝えること。曖昧にしないことが大切です。次回に補綴の話がある場合は「かぶせものの種類についても、そのときに詳しくご説明しますね」と予告を入れておきます。
最後に「安心の一言」。「何かあればいつでも聞いてくださいね。一緒に進めていきましょう」。この感情の締めと関係性の強化が、クロージングの本質です。
クロージングというのは、信頼関係をもう一度深めるための時間だと思ってください。
正解を言えるTCよりも、売り上げを上げるTCよりも、心に寄り添えるTCが患者さんから選ばれます。
── 中村綾(ホスピタリティTC養成スクール Day3 講座より)
患者さんに安心感が生まれることで信頼関係が生まれ、そこからはじめて自費治療や全顎治療といった選択肢にもつながっていきます。順番が逆になると、うまくいきません。「時間がないから」「なんとなく」でセカンドコンサルを省略してしまう医院もありますが、この時間こそがTCとしてホスピタリティを一番発揮できる場所だと、私は考えています。
まとめ──セカンドコンサルはマニュアルでもテクニックでもない
セカンドコンサルは、マニュアルでもテクニックでもありません。TCという仕事にどれだけホスピタリティを込められるか、そこに全てが詰まっていると思っています。
TCは治療を説明する人ではなく、患者さんの不安や迷い、希望をいったん受け取って、その思いをチームにつなぐ架け橋です。だからこそ「提案であって決定ではない」という言葉が意味を持つ。この言葉は、テクニックではなく、患者さんを主役にするという姿勢の表れです。
ドクターとの架け橋は私に任せてください──そう安心してもらえる存在になること。治療を進めることではなく、「この医院だったら安心して任せられるな」と感じてもらうこと。それがセカンドコンサルの本当のゴールだと、20年間の現場で実感しています。
よくある質問
Q セカンドコンサルで患者さんに「特にありません」と言われたらどうすればいいですか?
無理に心を開かせようとしなくて大丈夫です。「ありがとうございます。では今のお話を踏まえて、○○さんの歯の状態を一緒に見ていきますね。あとから気になることが出てきたら、いつでも聞いてくださいね」と自然に進めます。人はそれぞれ心を開くタイミングが違います。大切なのは、いつでも聞ける安心感を残しておくことです。
Q ドクターの治療方針が間に合わない場合、どう対応していますか?
セカンドコンサルの予約はアポ表で数日前に確認し、治療方針が出ていなければドクターへ連絡しています。大切なのは焦って書かせないこと。先生にも丁寧に治療計画を考える時間が必要ですから、「患者さんもTCも困っています」と伝えつつ、先生のペースも尊重する心配りが、チーム全体の信頼関係につながります。
中村 綾ホスピタリティTC養成スクール パートナー講師 / 医療法人翠章会 すまいる歯科 統括副院長・TC
TC歴20年、対応患者数3万人超。介護職から歯科に転身し、現場で積み上げた「聴く力」で信頼を築き続けている。
※個々の医院の状況により成果は異なります。本記事は特定の治療効果を保証するものではありません。


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