歯科TCのカウンセリング準備|コンサル成功の鍵「状態設計」とは

歯科TCのカウンセリング準備を象徴する、白い鉢から芽吹く新芽

初診カウンセリングの前に、あなたは何を準備していますか。問診票の読み込み、カウンセリングシートの用意、スライドの確認——もちろんそれらも大切です。けれど、歯科TCのカウンセリング準備で最も大切なのは「状態設計」です。状態設計とは、カウンセリングが終わった時に患者さんがどんな気持ち・感情になっていてほしいかを、事前に明確にしておくこと。この「作りたい状態」を持ってカウンセリングに入るかどうかで、患者さんとのコミュニケーションの質はまったく変わります。

目次

カウンセリングの「目的」を問い直す

初診カウンセリングの目的は何ですか?——そう問われたとき、「主訴を聞くため」「患者さんのことを知るため」「医院の方針を伝えるため」と答える方が多いのではないでしょうか。私自身もかつてはそうでした。

けれど、一度ぐっと引いて考えてみてほしいのです。初診カウンセリングは、診療全体の流れの最初の入口にすぎません。その先には検査があり、診断があり、治療計画の説明があり、治療があり、最終的にはメンテナンスへの移行があります。患者さんが「本当にこの医院に出会えてよかった。これからもここにお願いしたい」と笑顔でメンテナンスに通い続けてくれる——私はこの状態を「お花畑」と呼んでいるのですが、お花畑は最後の対応だけで花が咲くわけではありません。要所要所できちんと種をまき、水をやる必要があります。初診カウンセリングは、その一番最初の「種まき」なのです。

「主訴を聞く」「医院のことを伝える」は、ある状態を作るための手段であって、目的ではありません。最も大切なのは、初診カウンセリングを通して「何を作りたいか」という状態の設計です。

「状態設計」とは何か——カウンセリング準備の核心

状態設計とは、カウンセリングが終わった時点で患者さんにどんな気持ち・感情を持っていてほしいかを、具体的に言語化しておくことです。

私の場合、初診カウンセリングで作りたい状態はこうです。カウンセリングが終わった時に、患者さんが「ここの医院って全然今まで行ってきた歯医者と違うな」「信頼できそう」「私の悩みを解決してくれそう」「ちょっとしっかり通ってみようかな」——こんな風に感じていてほしい。もっと言えば、この後の検査やドクターの診察を受けるのが「ちょっと楽しみ」ぐらいのテンションに持っていきたいのです。

なぜそこまで考えるのか。ドクターに「熱々の状態」で患者さんを送ることで、その後の診察がとてもスムーズになるからです。ドクターが話すことへの受け入れ態勢ができているので、終わった時の納得感も作りやすい。初診カウンセリングの質が、その先のすべてのステップに影響を与えるのです。

あなたの医院では、初診カウンセリングが終わった時に患者さんにどんな状態でいてほしいですか。——この問いに、今すぐ言葉にできるものがあるでしょうか。

「作りたい状態」がある状態でカウンセリングに入るのと、ない状態で入るのとでは、患者さんへの関わり方がまるで変わります。状態設計があると、ひとつひとつの質問や声かけに意図が生まれます。「これは何のためにやっているのか」が自分の中で明確だから、相手の反応を見ながらコミュニケーションの角度を変えることもできる。逆に状態設計がないまま臨むと、聞くべきことを聞いて伝えるべきことを伝える「作業」になりがちです。

なぜ「ポジティブな状態」だけでは足りないのか

ここまで読んで、「なるほど、作りたい状態を決めればいいのか」と思った方もいるかもしれません。しかし、実は作りたい状態だけでは設計として不完全です。

患者さんには一人ひとり、それぞれの価値観や生きてきた経験、社会的な立場、生活環境、そして思い込みがあります。こちらが作りたい状態に向かってコミュニケーションを取っていても、そこに到達するまでの道のりを「遮断」してくる要因が存在するのです。

私はこの遮断要因を「ブレーカー」と呼んでいます。家のブレーカーが落ちたら電気が通らないように、患者さんの中でブレーカーが落ちたままでは、どれだけ丁寧にカウンセリングを進めても、私たちが作りたい状態には辿り着けません。

だからこそ、ポジティブな状態設計と同時に、「こうなってほしくない状態」も言語化しておく必要があります。「1時間もかかって検査ばっかりされた。虫歯を直してほしいだけなのに」「全然先生じゃない人がずっと質問してくる。問診票に書いたのにまた同じことを聞かれた」——こうしたネガティブな状態を具体的に想像しておくことで、そこに至る「ブレーカー」のポイントが見えてきます。

「うまくいかないな」と感じた時は、
どこかでブレーカーが落ちている。

初診カウンセリングで「落ちやすいブレーカー」とは

では、具体的にどんなブレーカーが落ちやすいのか。私がTC歴16年の中で特に多く遭遇してきたものをいくつかお伝えします。

まず、最初に落ちやすいのが「自分が大切に扱われていない」ブレーカーです。これは予約の電話の段階で発生し得ます。「その日は空いてないです」と言われただけで、自分が軽視されたように感じる方がいます。「その時間は空いていないのですが、この日のこの時間でしたらご案内できます」と一言添えるだけで、このブレーカーは回避できます。電話を一度保留にして確認する、そのひと手間をかけるかどうかで、患者さんの印象は大きく変わります。

次に、来院してからのブレーカー。多くの患者さんは、歯医者に行ったら診察室に入って先生に診てもらう、と想像しています。ところがカウンセリングルームに案内されて、知らない人と対面で座ることになる。これは患者さんにとって「想定外の動き」であり、自分のコントロールが効かないという不安を感じさせます。「何をさせられるのか分からない」「なんか怪しい」——そんなブレーカーが一気に上がることもあるのです。

こうした場面で私が大切にしているのは、とにかく笑顔で迎えること。マスクをしているので「目で笑う」ことを意識します。待ち合わせ場所で友達を見つけた時の「あ、いた!」というあの顔。あの安心感を、最初の出会いの瞬間で演出したいのです。そして、「お話を最初にお伺いさせていただきますが、この後診察室にもご案内いたしますので」と一言添える。「この先に診察がある」ということさえ伝えれば、患者さんの不安は大きく和らぎます。

「ブレーカー」に気づける自分をつくるために

ブレーカーという概念を知っていても、実際のカウンセリングの中で「今、この患者さんのブレーカーが落ちた」と気づけるかどうかは別の話です。

大切なのは、「この人、なんか反応が変わったぞ」という微細な変化に気づくこと。そしてその変化を「この人はこういう人だから仕方ない」と片付けるのではなく、「何かブレーカーが落ちたのかもしれない」という視点で捉え直すことです。カウンセリングがうまくいかない時、原因を患者さんの性格のせいにしてしまうと、そこで改善の余地がなくなります。でも「どこかでブレーカーが落ちた」と考えれば、「どこで落ちたのか」「どうすれば上げられるか」と次の手を考えることができます。

この視点の転換こそが、カウンセリング準備における本当の意味での「準備」ではないでしょうか。問診票を読み込むのも、スライドを整えるのも、すべては状態設計を実現するための手段にすぎません。「この患者さんをどんな状態で送り出したいか」——その問いを持って臨むことが、カウンセリングの質を根本から変えていきます。

POINT

状態設計とは、カウンセリングの「ゴール」を患者さんの感情レベルで描くこと。そのゴールがあるからこそ、ひとつひとつの声かけに意図が生まれ、ブレーカーにも気づける自分になれます。

まとめ

カウンセリング準備というと、どうしてもツールや手順に目が向きがちです。けれど、最も大切な準備は「この患者さんを、どんな状態で次のステップに送り出したいか」を決めること。そしてその状態を邪魔するブレーカーを想定しておくことです。状態設計があるからこそ、カウンセリングの中で起こるすべてのコミュニケーションに意味が生まれます。「手順をこなす」カウンセリングから、「状態を作る」カウンセリングへ。その転換のきっかけになれば幸いです。

FAQ

よくある質問

Q 「状態設計」は毎回の患者さんごとに変えるべきですか?

初診カウンセリングにおける大きな方向性(「信頼できそう」「通い続けたい」と感じてもらう等)は共通で持っておきます。そのうえで、患者さんの問診票の内容や来院時の様子を見ながら、「この方にはどのブレーカーが落ちそうか」を個別に想定して臨むのが理想です。

Q カウンセリング経験が浅くても「状態設計」はできますか?

むしろ経験が浅いうちほど効果的です。手順に追われてしまいがちな時期だからこそ、「最終的にこの状態を作りたい」というゴールを持つことで、何のために今の行動をしているのかが明確になります。完璧な状態設計でなくても、「この患者さんに安心してほしい」という一言があるだけで、カウンセリングの質は変わります。

Q ブレーカーが落ちたことに気づいた時、どうすればいいですか?

まず焦らないことが大切です。ブレーカーが落ちた原因は多くの場合「不安」や「誤解」です。患者さんの表情や反応の変化を感じ取ったら、一度立ち止まって「何か気になることはありますか?」と確認する。あるいは、言葉ではなく安心感を伝える笑顔やトーンで接する。ブレーカーは一度落ちても、丁寧に対応すれば上がります。

Q 状態設計とカウンセリングのマニュアル化は違うのですか?

まったく異なります。マニュアルは「何を言うか」「どの順番で進めるか」という手順の標準化です。状態設計は「この患者さんにどんな感情を作りたいか」という、ゴールの個別化です。同じ状態を作りたくても、目の前の患者さんによってアプローチは変わります。状態設計はマニュアルとは逆の発想で、むしろ「目の前の人を見て判断する力」を育てるための基盤になるものです。

森愛

森 愛

ホスピタリティTC養成スクール 講師

TC歴16年。勤務する歯科医院で補綴コンサルを中心に、自費カウンセリングの実務を一貫して担当。「型」を超えた個別対応の技術に定評がある。実践に根差した講義を担当。

HOSPITALITY TC SCHOOL

ホスピタリティTC養成スクールのご案内

状態設計の考え方やブレーカーへの対応は、現役トップTCの実践から体系化されたものです。「手順」ではなく「状態を作る力」を身につけたい方へ。

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※個々の医院の状況により成果は異なります。本記事は特定の治療効果を保証するものではありません。

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この記事を書いた人

森 愛のアバター 森 愛 医療法人キープトゥース 塚口むらうち歯科・矯正歯科 GM/TC

ホスピタリティTC養成スクール・パートナー講師|TC歴16年、現在も臨床現場に立つ現役TC。医院の中核として全顎症例のコンサル、矯正コンサルまで担当。未経験DAから成長してトップTCになる。考え方と技術を正しく学べば、誰でもTCになれる。森自身が、その証明です。

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