TC導入で歯科医院はどう変わる?院長の片腕を育てる意味

院長とスタッフが同じ方向を向いて歩む関係性を想起させる、二つの椅子やデスクが並ぶ穏やかなオフィス空間。

「TCを導入したいけれど、本当にうちの医院に必要なのだろうか」——そう迷っている院長先生は少なくありません。TC(トリートメントコーディネーター)とは、患者さんと歯科医師の間に立ち、カウンセリングを通じて信頼関係を築く専門職です。TC導入によって、院長の診療時間が確保され、患者さんとの関係が深まり、スタッフが自律的に成長し始める。数ヶ月で自費金額が100万〜200万円増加した事例も複数あります。ただし、それは「売り方」を教えた結果ではありません。この記事では、TCが「院長の片腕」として機能するために何が必要なのかを、ホスピタリティの視点からお伝えします。

目次

TC導入を躊躇する院長の「本音」

TC導入に踏み切れない院長先生に話を聞くと、共通する不安が浮かび上がります。

「カウンセリングという名のセールスになるのではないか」「育成に時間がかかるのに、辞められたら全部無駄になる」「そもそもカウンセリングルームがない」。どれも現場のリアルな声であり、まっとうな懸念です。

実際に、TC導入が「自費の売り込み係」になってしまっている医院は存在します。メニュー表を渡してクロージングを教え、契約率を追いかける。数字は一時的に上がることもありますが、スタッフの心は消耗し、患者さんとの関係もどこかぎくしゃくしたものになっていきます。

そうした事例を見てきた院長先生ほど、TCという仕組み自体に懐疑的になるのは自然なことだと思います。しかし、問題はTC導入そのものではなく、「どんなTCを育てるのか」にあります。

見た目はうまくいっている医院なのに、主力スタッフが疲弊して辞めていく。数字は伸びているのに、院長自身がどこか満たされない。——その経験に心当たりはないでしょうか。

TC導入で歯科医院に起こる「3つの変化」

では、TCが正しく機能すると、歯科医院にはどのような変化が起きるのでしょうか。私がこれまで多くの医院と関わる中で、繰り返し目にしてきた3つの変化があります。

変化①:院長の時間が生まれる

多くの院長先生は、治療と並行して患者さんへの説明やカウンセリングも行っています。「自分が説明しないと患者さんが納得しない」という責任感の裏側には、膨大な時間的コストがあります。補綴の選択肢を説明し、費用を伝え、質問に答え、不安を受け止める。それを1日に何人もの患者さんに対して行えば、診療時間は圧迫され、昼休みも削られていきます。

TCがカウンセリングを担うことで、院長は本来集中すべき診療に時間を使えるようになります。これは単なる業務の分担ではありません。「診る人」と「聴く人」が分かれることで、患者さんにとっても安心して話せる環境が生まれるのです。

変化②:患者さんとの信頼関係が深まる

ある歯科医院の院長がこう言っていました。「歯科医師は歯科治療の専門家ではあるかもしれないが、コミュニケーションを取る専門家ではない」。この言葉は、多くの院長先生が内心感じていることではないでしょうか。

患者さんが本当に不安に思っていること、治療に踏み切れない理由、過去の歯科体験で嫌だったこと——こうした「言葉にならない気持ち」を丁寧に聴き取るには、診療室のチェアサイドでは限界があります。TCが専用のカウンセリングの時間を設け、患者さんの話にじっくり耳を傾けることで、信頼関係は格段に深まります。その結果として、患者さん自身が「この治療を受けたい」と納得して選択できるようになるのです。

変化③:スタッフが自律的に成長する

これが、私が最も大切だと感じている変化です。

いいじま歯科クリニックの飯島浩理事長は、スタッフ2名をTC養成講座に送り出した後の変化をこう語っています。

VOICE

院長が見た「スタッフの変化」

前回参加したスタッフ2名がめちゃくちゃ成長し、自ら勉強し始めたり、コンサル準備をするようになったり。何より、2人が仲良く楽しそうに話し合っている姿が感動的です。今年は残り3名のTCと参加します。半年後の姿が楽しみで仕方がありません。

飯島浩先生

飯島 浩 先生

いいじま歯科クリニック 理事長

「自ら勉強し始める」「楽しそうに話し合っている」。これは、上から指示を出して動かした結果ではありません。スタッフ自身が「もっと患者さんの役に立ちたい」と内側から動き出した姿です。TC導入の本質的な価値は、売上の数字よりもむしろ、こうした人の変化にあると私は考えています。

なぜ「片腕」になれるTCと、ならないTCがいるのか

TC導入を検討するとき、「どんなTCを育てるか」という視点が抜け落ちがちです。同じ「TC」という肩書きでも、そのあり方はまったく異なります。

MANUAL TYPE

マニュアル型TC

トークスクリプト通りに説明する

メニュー表を見せて選択肢を並べる。クロージングの技術で契約率を上げる。誰にでも同じ説明を、同じ手順で。

HOSPITALITY TYPE

ホスピタリティTC

目の前の患者さんに向き合う

患者さんの不安や背景を聴き取り、その人にとっての最善を一緒に考える。関係性の中から「この治療を受けたい」が生まれる。

マニュアル型のTCは、決められたトークスクリプト通りに治療の説明を行い、自費の選択肢を提示し、契約に結びつけることを目標にします。誰に対しても同じ説明をする——いわば「いつでも・どこでも・誰にでも」の発想です。短期的には数字が出ることもありますが、患者さんからすれば「売り込まれた」という感覚が残ります。スタッフも、やればやるほど心が削られていきます。

一方、ホスピタリティTCは「いま・ここで・この人に」を原則とします。患者さん一人ひとりの不安や生活背景を丁寧に聴き取り、その人にとっての最善を一緒に考えていく。TCの仕事は「説明」ではなく「関係づくり」です。その関係の中で患者さん自身が「納得して選ぶ」からこそ、結果として治療への満足度も、医院への信頼も高まるのです。

院長の「片腕」になれるTCとは、マニュアルを完璧にこなすスタッフではありません。院長が大切にしている「いい医療を届けたい」という想いを共有し、患者さんとの関係を自分の力で築いていけるスタッフです。

TCの仕事は「説明」ではなく「関係づくり」。

TC導入を成功させるために大切な3つのこと

では、院長の片腕となるTCを育てるために、何が必要なのでしょうか。私たちの講座で多くの医院と関わってきた経験から、3つのポイントをお伝えします。

ポイント①:「ありがとうの総量」という価値観を共有する

TC導入で最も大切なのは、テクニックではなく価値観の共有です。

自費を選んでくださった患者さんがいる。それは「売上が上がった」ということではなく、「その患者さんにとって、より良い医療を提供できるきっかけが生まれた」ということです。私はこれを「ありがとうの総量が増える」と表現しています。メニュー表を渡すだけで自費金額が50万、100万と上がる事例は実際にあります。しかし、それを「セールス」だと思ってスタッフが渡せば、医院には定着しません。渡せば渡すほどスタッフの心が削られていくからです。

「患者さんのありがとうの総量を増やすために、私たちは何ができるか」。この価値観を院長とスタッフが本気で共有できたとき、数字は結果としてついてきます。ただの数字だけではなく、スタッフの気持ちも、患者さんの気持ちも一緒に変わっていくのです。

POINT

参加数ヶ月以内に自費金額が100万、150万、200万円増加したという事例は多数いただいています。しかし大切なのは、その数字が「売った結果」ではなく「患者さんとの関係が変わった結果」であるということです。

ポイント②:ゼロから始められる環境を整える

「うちにはカウンセリングルームがない」「TC経験のあるスタッフがいない」。そうした理由で導入を諦めている医院もあります。しかし、TC導入に特別な設備は必須ではありません。

ホスピタリティTC養成スクールの講師である中村綾は、TC歴20年のベテランですが、彼女自身、TCセミナーを一度も受けたことがない状態で、オープニングスタッフとしてTCのキャリアを始めています。当時は「TCと調べても、日本ではまだ情報がほとんどなかった」という時代です。大切なのは、経験やスキルの有無ではなく、「患者さんのために何ができるか」を考え続ける姿勢と、それを支える学びの環境です。

カウンセリングルームがなくても、TCの経験がゼロでも、始めることはできます。むしろ、変に自己流のクセがついていないからこそ、ホスピタリティの考え方をまっすぐに吸収できるという面もあります。

ポイント③:院長自身がホスピタリティを理解する

TC導入を成功させるうえで見落とされがちなのが、院長自身の関わりです。

飯島先生が2年目に「今年は残り3名のTCと参加します」と語ったのは、スタッフだけに任せるのではなく、院長自身もホスピタリティを学ぶことの大切さに気づいたからです。実際に、「今期は私もスタッフと一緒に参加しています」という院長の姿が、スタッフの成長をさらに後押ししています。

院長がホスピタリティの考え方を理解していなければ、TCが患者さんとの関係づくりに時間をかけることを「非効率」だと感じてしまいます。逆に、院長自身が「いま・ここで・この人に」という原則を体感していれば、TCの仕事の価値を正しく評価でき、医院全体が同じ方向を向くことができるのです。

まとめ

TC導入は、単なる業務の効率化でも、自費率を上げるためのテクニックでもありません。院長が大切にしている「いい医療を届けたい」という想いを、もう一人の自分——片腕——と共有し、患者さんとの関係を深めていく取り組みです。

マニュアル通りに動くスタッフではなく、患者さんの声に耳を傾け、自分で考え、自分で動けるTCを育てること。それが、医院の未来を変える第一歩になります。

FAQ

よくある質問

Q TC導入にはカウンセリングルームが必要ですか?

専用のカウンセリングルームがあれば理想的ですが、必須ではありません。大切なのは、患者さんが安心して話せる環境をつくることです。診療室の一角やスタッフルームを活用して始めている医院も多くあります。設備よりも「患者さんの声を聴きたい」という姿勢が出発点になります。

Q TCは歯科衛生士や歯科助手でもなれますか?

はい。TCは特定の国家資格を必要としない職種です。歯科衛生士、歯科助手、受付スタッフなど、さまざまなバックグラウンドの方が活躍しています。必要なのは資格よりも、患者さんに向き合う姿勢とコミュニケーションの技術です。これは学びと実践によって身につけることができます。

Q TC導入の効果はどのくらいで実感できますか?

医院の状況により異なりますが、講座受講後、数ヶ月以内に自費金額の変化を実感される医院が多くあります。ただし、より本質的な変化——スタッフの姿勢や患者さんとの関係性の変化——は、半年から1年をかけて深まっていくものです。短期の数字だけでなく、医院全体の空気が変わっていく過程にこそ注目していただきたいと思います。

HOSPITALITY TC SCHOOL

ホスピタリティTC養成スクールのご案内

「院長の片腕」となるTCを育てたい——そうお考えの院長先生へ。現役トップTCによる実践講座と、ホスピタリティ理論に基づいた考え方の両方を学べるスクールです。マニュアルではなく、患者さんとの関係性を本質から変えたい方のための場所です。

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河合良一

河合 良一

ホスピタリティTC養成スクール代表 / 一般社団法人日本歯科ホスピタリティ協会 代表理事

歯科業界18年。前職のコンサルタント会社で売上拡大を支援する中で「ノウハウの限界」に直面し、山本哲士のホスピタリティ理論と出会う。以来10年、ホスピタリティを土台にした医院づくりに取り組む。ノウハウを渡すのではなく、共に見つけ、育てる「ホスピタリティ開発者」。

※個々の医院の状況により成果は異なります。本記事は特定の治療効果を保証するものではありません。

院長とスタッフが同じ方向を向いて歩む関係性を想起させる、二つの椅子やデスクが並ぶ穏やかなオフィス空間。

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この記事を書いた人

河合 良一のアバター 河合 良一 ホスピタリティTC養成スクール代表/一般社団法人日本歯科ホスピタリティ協会 代表理事

ホスピタリティTC養成スクール代表/一般社団法人日本歯科ホスピタリティ協会 代表理事|歯科業界で18年。難解なホスピタリティ理論を、現場で使える言葉と技術に翻訳する人|山本哲士のホスピタリティ理論・文化資本論を基盤に、歯科医院にてホスピタリティ開発を行う。

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