【サービスとホスピタリティの違い① 】 ホスピタリティって、何?

歯科業界どころか一般業界でも山本哲士先生が提唱する「ホスピタリティ哲学」はごく一部の方にしか知られていません。

経営においても一部の上場企業や中小企業や金融機関などでも取り組んでいる企業は存在し、様々な成果を出してもいますが、まだ多くはありません。

そのため、「そもそもホスピタリティとは何なのか」「歯科医院に取り入れるとどんないいことがあるのか?」という疑問を持たれる方も多いはずです。

私は、「ホスピタリティ」のを経営に生かす歯科医院が増えることで、患者さんが体験する価値が圧倒的に高まるだけでなく、院長もスタッフも働く人のやりがいが増し、医院を取り巻く人の幸福度が確実に上がると確信しています。

それを実現するため、このブログでは少しでもみなさんにホスピタリティの考えや、歯科医院への取り入れ方を知っていただきたいと思っています。

最初は少し難しく感じる部分もあるかもしれません。なるべく分かりやすく説明したり、今後は動画なども使ってみなさんにお伝えしていきたいと思っていますので、ぜひ読んでいただきたいと思っています。


ホスピタリティは「おもてなし」「丁寧な接遇応対」とは違う

さて、ホスピタリティというと「おもてなし」とか「丁寧な接遇」という文脈で語られたり、なんとなくで捉えられていることがほとんどですよね。しかし、私たちが言うホスピタリティは、それとは異なります。

このブログでもこれから「ホスピタリティとは?」ということについてシリーズ化して説明していきますが、まずこの記事ではホスピタリティのごく基本的な部分の理解をしていただくために「サービスとホスピタリティの違い」の一部をご紹介します。


「サービス」とはホスピタリティではないもの

なお、ここでの「サービス」とは、一般的に使われている「商品」「おまけ」「お得な品」のような意味合いではありません。

哲学用語なので慣れるまで違和感があると思いますが、慣れると非常に分かりやすくなってきます。

今のところはサービスとは「ホスピタリティではないもの」と理解されてください。つまり、サービスとはホスピタリティと対極にあるものです。

まずはサービスとホスピタリティの違いという側面からホスピタリティの基本を知ってください。そしてぜひ、「これを自分の歯科医院に活かすとどんないいことがあるのだろう?」と考えていただきたいと思っています。


サービス=「いつでも、どこでも、誰にでも」

この「サービス」をとても分かりやすく表現した「いつでも、どこでも、誰にでも」という言葉があります。

これは、山本先生とホスピタリティ研究をされ「ホスピタリティ金融機関」として一部で有名であった元巣鴨信用金庫の常務理事や顧問を歴任された田中実氏が生み出した言葉です。大変分かりやすいので、サービスとホスピタリティの違いを説明するときにいつも使用させていただいています。

「いつでも、どこでも、誰にでも」というのは、つまり「1対多」の構図で、誰に対しても同じように効率良く物を販売したりすることです。商品開発、商品提供、マーケティング、マネジメント、組織作りなど、経営やビジネスのどんなことにも当てはめて使える言葉です。


JRはサービス?ホスピタリティ?

まずは分かりやすいサービス企業の例を出すと、公共交通機関であるJRがあります。

JRはいつでも、誰に対しても、同じ「電車で人を輸送する」という商品を提供してくれていますよね。1人の乗客にどんな事情があろうが関係なく、JRが決めた時刻表に沿って運転されています。

例えば、あなたが寝坊して重要な仕事に遅刻しそうだからと言って、これに乗らないと大切な仕事に間に合わないでしょ!?発車を2分待つから、急いで!なんて待ってくれないですよね。

逆に、JRが「ホスピタリティを大切にしよう」と考えて、個別の誰かに合わせて電車の運行してしまうと他の人にとっては迷惑極まりないですよね(東北新幹線のグランクラスくらいであれば、もっとホスピタリティの運用の余地がありそうですが・・・)。


新幹線のグリーン車はサービス?ホスピタリティ?

では、新幹線のグリーン車はどうでしょう。

誰でも一定額を支払えばグリーン車にアップグレードできます。金額が高い分、提供してもらえるものも普通車とは異なります。例えば、おしぼりをもらえる、雑誌が置いてある、座席が広い。そして少しだけ応対が丁寧などの違いがあります。

これは、サービスでしょうか?ホスピタリティでしょうか?

答えは、サービスです。

普通車とは提供している価値が高いですが、グリーン車の乗客には「いつでも、誰にでも、同じもの」を提供しています。空間としては普通車よりも上質で、接客も少し丁寧ですがサービス型の商品です。

あなたにとってその日が、誕生日であろうが結婚記念日であろうが、何か嫌なことがあった後だろうが、いつも同じです。

一般的には「より上質な空間・設備」「より丁寧な接客・接遇」をホスピタリティという言葉で表現されていますが、それが「いつでも、どこでも、誰にでも」行っているものであれば、「サービス=ホスピタリティではないもの」と分類します。

なお、現在の世の中ではほぼ全ての企業は「サービス型」の企業運営、商品開発、商品提供、人材育成を行っています。過去の経済や需要が右肩上がりの時代は、サービス型でビジネスを展開したほうが効率化・売上の最大化がしやすかったからです。

特に大企業になると、1人1人の客や従業員に個別対応していたら、現場もビジネスも回すことができなくなってしまいます。すでに人口も需要も右肩下がりの状態の日本において、過去のビジネスモデルで経営をせざるを得なく、苦しんでいる企業が多くあります。

なお、歯科医院でも規模や売り上げの拡大をとにかく効率よく達成していくことを目的とするのであれば、サービス型の企業づくり・医院づくりが適しています。

※ここで注意点があります。サービスとホスピタリティの違いを解説すると、「サービス=悪」「ホスピタリティ=善」のような捉え方をされてしまうことがあります。

そうではなく、目的次第でどちらも有用なものです。どちらが正しい、どちらが悪いということではなく、まずは違いを知って「自分の歯科医院ではサービス型、ホスピタリティ型のどちらを目指したいか?」を考えてみてください。

ホスピタリティ=「いま、ここで、この人に」

サービスに対して「ホスピタリティ」を一言で表現すると「いま、ここで、その人だけに」となります。つまり、サービスの「1対多」に対しての商品提供や価値提供ではなく、「1対1」の個別対応での価値提供技術ということです。

最近こんなことがありました。JR福井駅で私がいつも「缶詰のカニみそ」をお土産に買うお店があります。

毎月必ず買っているうちに、店員さんが私のことを覚えてくれて「あら、久しぶり!お待ちしてましたよ!」と嬉しそうな顔をして、「今日もお仕事ですか?」などと前の会話まで覚えていてくれて、楽しく、気持ちよく会話ができました。おまけでお煎餅までくれました。

私にとっては私に対しての個別対応だと感じたことで、もっとここのお店が好きになりました。これがホスピタリティの一例です。

おそらく、ほとんどの人が多かれ少なかれ同様の体験をしたことがあるのではないでしょうか。


ホスピタリティはセンスのある人しかできないのか?

上記の例だと、店員さんがたまたまセンスのある方であるだけで、きわめて属人的なために再現性が全くないのではないかという感想を持たれる方がいらっしゃると思います。

しかし、言葉・構造としてホスピタリティというものを捉え、それをもとに経営を行うことで、いままで属人的だったものに再現性が生まれるようになりました。院長先生が意志さえ持てば、程度の差はあれども医院のホスピタリティ化は多くの医院で可能であると考えています。


ホスピタリティは「顧客」づくりにつながる

企業や歯科医院にとってホスピタリティを取り入れることのメリットはたくさんありますが、その中の1つとして「顧客づくり」につながるということがあります。

サービス型の商品提供や接客技術の場合には、商品の質に対してのファンができても企業や人に対してのファンはできづらいものです。

ホスピタリティ型の企業・医院を目指すことで、客(患者)との間に「つながり」や「絆」を育むことができるため、結果として「顧客」になっていきます。

昨今のマーケティング手法による集客・集患ばかりが喧伝され、ノウハウが溢れている現在の歯科業界にこそ「つながり」「絆」を深めていく顧客作りこそ、今の時代に必要な方向性ではないでしょうか。


ホスピタリティ歯科医院を目指す最初の1歩

ホスピタリティ医院を目指したい、もっとホスピタリティを理解されたいという方は、ぜひ日常から「サービス」と「ホスピタリティ」を探してみてください。

日頃の買い物や飲食の体験、もしくは自分たちがやっている仕事を「これはサービスだな」「この部分はホスピタリティだよな」などと切り分けてみるのです。少しずつでもサービスとホスピタリティの違いに敏感になると、面白いくらい世界の見え方が変わっていきます。

人が行っていることがサービスなのか、ホスピタリティなのかがよく見えるようになり、その後にご自身のやっていることがどちらに属するのかをチェックできるようになります。そうなると、あなたの歯科医院の経営改善に大いに生かされていくようになります。

次回以降のブログでも、歯科医院にとってのホスピタリティの活用方法や、さらに深いサービスとホスピタリティの違いなどもご紹介していきます。すこし難しく感じる方もいたかもしれませんが。まずは多くの歯科業界の方に、「ホスピタリティ」というものを知っていただきたいと思っています!

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