ホスピタリティTCスクール第3期・第3回のDay3では、何を学び、何が変わるのでしょうか。Day3は、コミュニケーション設計の理論、初診コンサルのロールプレイング、セカンドコンサルの実践技術という三つの柱で構成されたプログラムです。この記事では、ホスピタリティTCスクール第3期Day3の全講座を、受講者の声とともにレポートします。
Day3の全体像──3つの講座で「使える技術」を身につける
ホスピタリティTCスクールのDay3は、全5回のプログラムの第3回にあたります。Day1で哲学と考え方の土台を学び、Day2で患者対応の実践に踏み込み、Day3はそれらを「現場で使える技術」として統合する一日です。
プログラムは大きく三つの講座で構成されています。第1講座は河合良一によるホスピタリティ・コミュニケーションの設計と体感ワーク。第2講座は森愛による初診コンサルのロールプレイング演習。第3講座は中村綾によるセカンドコンサルの実践技術。いずれも「知識として知っている」を「現場で使える」へ変えることを目的としています。
第3期ではDay1・Day2で「心配のワーク」や自律と他律、状態設計といった概念をすでに学んできています。Day3は受講者にとって三度目の学びの場。「やっと腑に落ちた」という声が多く聞かれたのが、この第3回の特徴でした。
第1講座|河合良一「コミュニケーションを構造で捉える」
河合良一の講座は、前半がワークを中心とした体感型、後半がコミュニケーションの構造を理解するレクチャー型という二部構成です。「頭でわかる」のではなく「身体で気づく」ことを重視した設計は、Day1・Day2を経た受講者だからこそ受け取れるものがあります。冒頭で河合が受講者に投げかけたのは、「心配のワーク」の宿題を踏まえた問いでした。「どこまで相手に踏み込んでいいのか」「重い相談をどこまで背負えばいいのか」──受講者が現場で感じていた切実な悩みに対して、河合は二つの概念を提示しました。
一つ目は「バウンダリー(境界線)」。ホスピタリティは相手と融合することではなく、自分と相手の間に健全な線引きを保つことが前提であるという考え方です。河合はカウンセラーの世界で当たり前に使われるこの概念を紹介しながら、「入り込みすぎると自分が消えてしまう。自律的に自分の線を守る意識を持ちましょう」と語りました。
二つ目は「課題の分離」。伝わるように伝えることは自分の責任。しかし、それをどう受け取り、どう決断するかは患者さんの課題である、という線引きです。横柄な態度の患者さんに対して全部を背負おうとしなくていい、という話に、受講者の表情が和らいだのが印象的でした。
POINT
ホスピタリティとは、相手のために自分を犠牲にすることではない。「バウンダリー(境界線)」と「課題の分離」を知ることで、自分を守りながら相手を支えるという、健全な関係のあり方が見えてくる。
後半は、身体を使った体感型のワークが行われました。一見シンプルな演習ですが、条件が変わるだけで自分の振る舞いがまるで変わる。忙しい日常の診療で無意識に起きていることを、身をもって体験する時間でした。河合はこの体験を通じて「分離」と「非分離」の違いを受講者に示しました。「テクニックだけだとこの関係は生まれない。そこに意図を載せるということが大切」──言葉で聞くのと体で感じるのでは、まったく違う気づきがあったようです。
レクチャーパートでは、コミュニケーションの構造そのものを可視化する講義がありました。「伝わった、は相手が決める」「コントロールできるのは自分の発信だけ」──この原則を、言葉だけでなく、服装や身だしなみ、表情まで含めた広い意味での「発信」として捉え直します。「ノウハウばかり学んでいると、誰に対しても同じうなずきをやるサービス型のTCになる。まず状態設計があって、そこからアクションがある。この順番を絶対に忘れないでほしい」──この言葉は、スクール全体を通じて繰り返されたメッセージでもありました。
第2講座|森愛「ロールプレイングで気づく自分の癖」
第2講座では、森愛の進行のもと、初診コンサルのロールプレイングが行われました。特徴的だったのは、自院ではなく他院のツールを使って演習を行うという設計です。慣れた環境を離れることで、普段は気づかない自分の癖が見えてくる。受講者はペアになり、TC役と患者役を交代で体験しました。
森は「嫌な患者さんをあえてやってみてもいい。自分がこんな患者さんに当たったら嫌だなと思う人をやってみましょう」と声をかけました。演習後のフィードバックでは、聞く姿勢や記録の仕方にまで講師のコメントが入ります。「やっているつもり」と「実際にできている」の差を、安全な環境の中で知ることができるのがこの講座の狙いです。
受講者からは「他院のツールを見せていただくのは新しい機会だった」「自院の改善点が見えた」という声が挙がりました。知識として知っていたことと実際にできることの差に気づく──これがDay3ならではの体験でした。
第3講座|中村綾「セカンドコンサルの実践技術」
第3講座は、中村綾によるセカンドコンサル(セカコン)の実践講座です。TC歴20年、対応患者数3万人超の中村が、自身の現場で使っているセカコンの技術を惜しみなく共有しました。
中村がまず強調したのは、セカコンの「始め方」です。冒頭のたった一言で、患者さんの構えがほどけ、その後の説明の受け取り方がまるで変わる。「勝手にされた」という多責やクレームを未然に防ぐ効果もあると中村は語りました。20年の現場経験から生まれたこの導入は、受講者にとって最も印象に残ったポイントの一つでした。
セカコンはマニュアルでもテクニックでもない。
TCという仕事にどれだけホスピタリティを込められるか──そこに全てが詰まっている。
中村の講座では、レントゲンの見方から虫歯の説明、根の治療への心構えの伝え方に至るまで、セカコンの一連の流れが紹介されました。中でも受講者の反応が大きかったのは、クロージングの考え方です。中村はクロージングを「説明を終わらせる時間」ではなく、「患者さんが前向きに一歩踏み出すための時間」と定義します。そのための具体的な型があり、最後の一言にまで意味が込められている。その設計を知ると、「ふわっと終わってしまう」という多くのTCが抱える悩みの構造が見えてきます。
さらに中村は、治療計画をそのまま伝えるだけでなく、患者さんの気持ちに合わせて伝え方や順番を工夫することの大切さにも触れました。「患者さんが一番の悩みを解決されたという実感を持てること。それが通院への前向きさにつながる」という言葉に、多くの受講者がメモを取っていました。
受講者の声──「3回目で腑に落ちた」という体験
Day3のアンケートには、3回目ならではの深い気づきが数多く寄せられました。
VOICE
「”伝わった”は相手が決める」を、身をもって知った
コミュニケーションについて「受信が全て」というお話で、どう受け取ってほしいかは話をしたりメッセージだけでなく、身だしなみ、空気感など五感で感じるもの全てということを改めて考えさせられました。まずはあいさつに意味を込めることから始めていきたいです。
第3期受講者
歯科衛生士
ある受講者は「課題の分離のお話を聞いて心が軽くなりました。患者さんから厳しい意見をもらうことがありましたが、自分の課題は受け止めて、患者さん側のものは受け止めすぎないよう一線を置くことを頭の片隅に置いてコンサルに挑戦していきたい」と書いていました。理事長として参加した飯島先生は、あいさつについて「十分認識していたつもりでしたが、結論、自分が実践できていませんでした。明日から意識して取り組みます」と率直に振り返っています。
セカコンについては「冒頭の一言の大切さを知らなかった。ただ治療内容を伝えて、同意を得ていただけだった」という声や、「ふわっと終わってしまうという悩みの原因がわかった」という声がありました。受講者それぞれが、自分の現場に持ち帰れる具体的な「気づき」を得ていたことがうかがえます。
まとめ──ホスピタリティは「技術」だからこそ、繰り返しで身につく
Day3を通じて一貫していたメッセージは、「ホスピタリティは哲学であり、技術である」ということでした。哲学が変われば見える景色が変わる。そして技術であるからこそ、反復によって誰でも上達できる。河合が講座の中で繰り返した「最初は時間がかかる。でも繰り返していけば、その場でできるようになる」という言葉は、Day1からDay3までの学びを貫くメッセージでもありました。
バウンダリーや課題の分離、コミュニケーションの構造、セカコンの型──いずれも「知っている」と「できる」の間に大きな溝がある領域です。Day3はその溝を、講義と体感と実践の三つの方法で埋めていく一日でした。受講者の「やっと腑に落ちた」という言葉は、3回の積み重ねがあって初めて生まれるものです。
ホスピタリティTCスクールは、全5回のプログラムです。Day3を終えた受講者はここからDay4・Day5へと進み、現場での実践を重ねながら、考え方と技術の両方をさらに深めていきます。
FAQ
Q ホスピタリティTCスクールのDay3ではどんなことを学べますか?
Day3は全5回のうちの第3回で、コミュニケーションの構造を理解する講座、初診コンサルのロールプレイング演習、セカンドコンサルの実践技術という三つの講座で構成されています。Day1・Day2で学んだ考え方を、現場で使える技術として身につけることが目的です。
Q ロールプレイングはどのように行われますか?
受講者がペアになり、TC役と患者役を交代で行います。他院の問診票を使い、共通の患者設定のもとでカウンセリングを実施。終了後にはフィードバックの時間が設けられ、自分の課題を具体的に認識できる構成になっています。
Q TC未経験でもDay3の内容についていけますか?
Day3はDay1・Day2の積み重ねの上に設計されているため、スクール全体を通じての受講が前提です。ただし、講師陣は「初歩的な内容こそ大事」というスタンスで、基礎から丁寧に扱います。中村綾の講座では「患者さんは私たちの当たり前を知らない」という前提に立ち、TC歴の長短に関わらず学べる構成になっています。
Q 受講後のフォローはありますか?
各回の間に宿題が出され、LINEでの質問も受け付けています。宿題に対する講師のフィードバックは次回の講座冒頭で共有されるため、他の受講者の実践からも学ぶことができます。
JDHA 編集部日本歯科ホスピタリティ協会
ホスピタリティTC養成スクールの講座内容や、歯科医院の現場に役立つ情報を発信しています。
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※本記事はホスピタリティTCスクール第3期Day3の内容をもとに構成しています。個々の医院の状況により成果は異なります。受講者の声は本人の許可を得て掲載しています。


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